ゆきノート

好きな本や音楽、同棲中の恋人とのことなどについて。

6度目のバレンタイン

気付けば恋人と付き合い始めてからのバレンタインも、先日で6回目だったわけで、6回目ともなるともう、巷に流れるラブソングのような甘い一日という認識ではなくなる。ちょっと最後の手段で決めちゃうこともしないし、計算する女の子も期待してる男の子もいない。好きな人に愛を伝える日と言われても、好きな人には常日頃から愛を伝え合っているので、今更改まってという話でももはやなくなっている。

しかしやはりお祭りごとは大好きな日本人。お菓子メーカーの謀略に乗せられているとは分かっていながらも、懲りずに毎年恋人のためにチョコレートを買ったり作ったりするわけだ。今年のバレンタインは手作りした。作ったのはチョコレートバー。溶かしたチョコレートにグラノーラやマシュマロを混ぜて平らに伸ばし、その上にドライフルーツとナッツをトッピングして冷蔵庫で固めて包丁で切り棒状にする、というわりかし簡単な工程。これまでのバレンタインに作ってきたどのお菓子よりも簡単にできてしまったのだった。

ちなみに過去のバレンタインには、まずガトーショコラを作ったことがあるのですが、生地の配合か焼き加減か何かしらが良くなかったらしく、「ラスクか?」というぐらいにカリっとしたガトーショコラが完成。またステンドグラスクッキー(クッキーの中央にドーナツのように穴をあけ、そこに飴を溶かして固めることでステンドグラスのように透明で綺麗な窓ができる)を作った時は、飴の部分を厚くしすぎて「わしゃあ煎餅を食っとるんか」と言いたくなるぐらい歯ごたえの強いクッキーを生成。生チョコを作った時には湯煎に使うお湯の温度が低すぎてチョコレートが溶け切らず、何も入れていないのに「チョコチップが入っててアクセントになって美味しい!」と言われるという始末。

こんな感じで今まで微妙にお菓子作りに失敗し続けてきたのですが、それでも恋人は私の作るものを美味しいと思ってくれているようで。今年のバレンタイン前に「チョコレートは買ったやつと作ったやつどっちがいい?」と聞いてみると、「雪の作るお菓子美味しいから、手作りがいい」と言う。しかもその後には「あ、でも作るの大変だったらもちろん買ったのでいいよ!手間も時間もかかるだろうし!」とのフォロー付き。何という人格者。まず私の作ったものが美味しいか、そうか。

というわけでネットで調べたら出てきたチョコレートバーを作ったわけですが、これが見た目こそ地味だったものの、まあまあ美味しかった。まあもともと美味しいものを混ぜて固めただけなので、不味くなる要素はないんですが。

やっと無駄な感想に邪魔されずに味を楽しんでもらえるお菓子を生成できた…!とウキウキしながら恋人にチョコレートバーを手渡した。その場で食べてくれて、期待通り感想は「美味しい!」と。その後に「今までのバレンタインのお菓子で一番好き!」と続く。ちなみにこの一連のセリフは毎回のことなので、額面通りに受け取れば恋人の中で、私の手作りのお菓子は年を追うごとに美味しくなっていっていることになる。

やっぱり、自分の作ったものを褒めてもらえるのは嬉しい。相手を喜ばせるために作ったもので、ちゃんと相手が喜んでくれる。これって、お互いに信頼関係があるから成り立つことだと思う。相手が好きであろうもの、相手を喜ばせる反応、これを互いが把握していることによって、プレゼントを贈るときの理想的なコミュニケーションが展開される。

私たちはもう6年目のカップルなのでこの流れにもきっともうお互いに、いい意味で慣れてきたのだと思う。私は、恋人が私からの手作りチョコを純粋に嬉しいと感じてくれることを知っている。だから、20代半ばになっても中学生や高校生みたいに、お菓子メーカーのバレンタイン特設サイトに掲載されているレシピを頼りに一生懸命板チョコを刻んで湯煎をする。恋人は、私が恋人の「美味しい」「ありがとう」という言葉に幸せを感じることを知っているから、私が欲しい言葉を返してくれる。これが、お互いを幸せにできるカップルの作法なのだと思う。

ちなみに今年作ったチョコレートバー、結構これまで作ったお菓子の中では、恋人にとって群を抜いて美味しかったようで、まあまあの量を作って恋人の家の冷蔵庫に入れ、「まだあるからゆっくり食べて。生クリーム入れてないからそんなに傷みやすくもないはず」と伝えた割には1、2日で消費された。しかもその数日後に会った時には、「チョコもうなくなったんだけど、補充まだ?」と真顔で言われた。「あれは常時ストックのやつじゃないから、補充は少なくとも数か月後だね」と真顔で返しはしたものの、これだけ気に入ってもらえるとやはり嬉しい。案外1か月後とかに懲りずにまた作ってしまうかもしれない。簡単だったし。

これが私たちの今年のバレンタイン。さあ来年は何を作ろうか。