ゆきノート

好きな本や音楽、同棲中の恋人とのことなどについて。

三連休の最初の日。君とカレーとホラー映画と。

目が覚めると恋人の家のベッドの上だった。

隣では恋人が寝そべったままタブレットで動画を見ていた。枕元のスマホを手繰り寄せて時刻を確認すると11時半。昼まで眠っていた。

恋人がタイトルのよくわからないドラマから目を離して私におはようと言い、「もう起きる?もうちょっと寝る?」と聞いた。寝起きと昨夜飲んだワインのせいでぼーっとした頭で、「…どっちでもいい」とブランケットにくるまった。恋人は「もうちょっと寝るのも一応選択肢には入ってるんだな」と笑った。その時は笑われたことにムッとしたが、あと30分で正午なのを考えると当然の反応だと思う。

昨夜は職場の飲み会で、お洒落なイタリアンでワインをたくさん飲んでそのまま2次会に連れて行かれ、カラオケで盛り上がった後に夜更けてから、一人暮らしの恋人の部屋に転がり込んだ。夕べはお偉方に囲まれて緊張していていつもよりちょっと多めにお酒を飲んでしまったこともあって結構酔っぱらっていた。それに厄介なのは、体質的にあまりワインは合わないタチなのにワインが大好きなことで、コースの料理の美味しさもあって勢いに任せて飲んだ結果、恋人の部屋に着いてからは頭痛が収まらなかった。

飲み会終わりに恋人の家に泊まりに行くことはよくある。その度に恋人には深夜にも関わらず酔いどれOLの相手をさせることになるので、多少の申し訳なさを感じていたりする。それで翌日の昼頃に目が覚めてから、夕べはごめん、と謝ると、「面白いからいい」と言われる。私の酔っぱらった姿は面白いらしい。お酒に酔っていても記憶はバッチリ残っているタイプなので、言いたいことはわかる。私は酒気を帯びると恋人の前では暴言マシーンになるらしい。酔っぱらって暴言を吐きまくるOLを「面白い」の一言で片づけられる恋人もなかなかの変わり者だと思う。

そうして昼過ぎになってやっとベッドから出て活動し始める。街へ買い物やカフェ巡りに出かけたりする時が多いが、そのまま二人家でだらだらして一日を終わらせることもよくある。今日は後者だった。昼過ぎに起きてそのまま部屋の中でごろごろする一日。三連休の初日としてこれ以上に素晴らしい過ごし方はない。

昼食の材料を買いに出かけた。メニューはカレーライス。恋人の大好物で、比喩ではなく毎日でも食べられるらしい。あまりに恋人がカレーが好きなので、私もカレーが好物になった。私でも多分今なら毎日でもカレーを食べられる。

野菜とシーフードミックスの入ったスーパーのビニール袋を提げてジメジメする外気の中を歩く。今日はシーフードカレーだ。家に帰って調理を始める。私は恋人に言われるままに人参2本の皮をむいてすりおろす。恋人のカレーは野菜が全部形を残していない。人参やジャガイモは全部すりおろされ、玉ねぎはみじん切りにされたうえで形がなくなるまで炒められる。ネットショッピングで調達した大瓶のスパイスなんかもバンバン入れるので、家庭的なカレーよりも異国のカレーに近づいていく。ローテーブルの周りに腰を下ろして、異国っぽいカレーを食す。「次はこれを入れたらもっと美味しくなるな」と探求心と向上心に燃える恋人を横目に、私は「これ美味しいねえ」と単細胞っぽい感想だけ告げてちょっと大きめのエビを突っついていた。

その後は配信の映画を見ることにした。なんだか評価の高そうなアメリカのホラー映画。怖がりのくせに怖いもの見たがりな私は恋人と一緒の時はここぞとばかりにホラーを見たがる。グロテスクなのはあまり得意ではないので、あらすじや紹介文をじっくり吟味して、あまりグロくなさそうで、かつ程よいスリルが楽しめそうなものを選ぶ。今日は作品選びに成功したようだ。主人公がひたすら何かに追いかけられ続けるストーリーに、あまりグロテスクなシーンは出てこなかったし、主人公が人ならざる何かに追い詰められるシーンもハラハラした。緊迫したシーンで恋人が後ろから大声で脅かしてきたので、びっくりしてぶん殴ってしまった。ごめん。

毎日同じ時間に職場に行って一日中デスクワークをしてという生活をしていると、今日みたいなのんびりとゆったりとした休日の過ごし方がすごく贅沢に思える。夕べはお酒の付き合いに必死についていこうと、お酌をしてされて、気を遣って遣われて、そんな時間を過ごしていたのに、その数時間後にはこんなゆったりした時間の流れの中にいるのがなんだか面白い。飲み会も楽しいけれど、やっぱりこういうマイペースな一日の方が私には合っていると思う。

こんな風に何の起伏もオチもない、ただの休日のことを、こうやって文章にして残す。傍から見たら退屈な文章かもしれないけれど、どうしても幸せな時間を形にして残したくなってしまうんだなあ。あとからふと思い立って読み返したときに、ああ、この時の私もこんなに幸せだったって、思い直したいんだ。